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                        | 夜遅く、残務整理をしていると、事務所の電話が鳴った。 「今すぐ、夫(34)を捜してください」と、主婦からの電話だった。
 
 「夫の携帯にかけてもつながらないので会社に電話したら、今日はもう帰ったと言われて・・・出張なんて、きっとウソだったんです」と彼女は話し続けた。
 
 事情を聴くと、つい2時間前、彼女の実家から彼女の父親が不慮の事故で亡くなったという連絡が入ったという。が、バイヤーの夫は昨日の朝から北海道出張に出かけており、3日間戻らない予定らしい。
 
 自分は葬儀の準備で忙しい。
 代わりに夫を捜し、明後日の告別式には間に合うよう伝えて欲しい。
 ついでに夫がどこに泊まっているのかも突き止めてもらいたい。
 -----これが彼女の依頼である。
 
 夫の顔写真をメールで返信してもらい、会社帰りを尾行することに・・。
 が入った先は、あるワンルームマンションの一室。
 チャイムを押すと、インターホン越しに若い女性の声がした。
 彼女に事情を説明し、夫の”引き渡し”を要求した。
 5分後、中から出てきたのは顔面蒼白の夫。
 
 同じ男としては同情しないではないが、世の中、間の悪い男もいるものである。
 夫は慌てて妻の実家に飛んでいった。
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